2013年12月21日土曜日

恐い話

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お供え物はスニーカー

俺の家は物凄い田舎で、
学校に行くにも
往復12kmの道程を自転車で
通わないといけない。
バスも出てるけど、
そんなに裕福な家でも
ないので定期買うお金が
もったいなかった。
学校への道はちょっと
遠回りだけど街中を通る道と、
若干近道だけど
山越えをする道と
2つあるんだが、
俺は山越えで汗だくに
なるのが嫌だったので
ほとんど街中のルートを
通っていた。

ある日、学校の体育館で
友達とバスケをしていて
遅くなった俺は、
早く帰ろうと自転車で
山越えをしようとしていた。
街中に入る道と山道に
入る道の分岐点にある
コンビニで飲み物を買って、
いざ山越えに。

日が沈み始めた山道は
結構不気味で、
ひぐらしの鳴く声を聞くと
心細くなってやけに不安になる
戻って街中を通ろうかな…
なんて思いつつ
ガッシャンガッシャン
自転車をこいでると急に
「も゛っも゛っも゛っ」
ていう表現しにくい
うめき声のようなものが聞こえ
その瞬間に何かが背中に
ドスッと落ちてきた。
上半身をグッと下に
押し付けられるような
感覚に襲われ、
冷や汗とも脂汗とも言えない
妙な汗が体中から
噴き出してきた。
怖くて振り向けずに
とりあえず峠を越えようと
がむしゃらにこぎ続けてた。
その間にも背中から
「も゛っむ゛む゛っ」
と変な声が聞こえている。

絶対変な物を背負ってしまった、どうしよう…と
涙目になって自転車
こいでたら
上り坂の終わり、
峠の中腹の開けた場所に出た。
息を切らしながら足をついて
崖側の方に目を向けると、
小さな女の子が居た。
夕日の色でよく
わからなかったけど、
白っぽいシャツの上に
フードつきの上着と
デニムスカートを穿いた
セミロングの子。
大体6〜7歳くらいに見えた。
車なんて通らない田舎の山道に、しかももうすぐ日が
暮れてしまう山道に
女の子がいるはずがない。
ああ…ひょっとしなくても
幽霊か…って思って
動けないでいると、
その子は小走りで
俺の足元まで来て
俺をじーっと見上げた。
10秒くらい見つめたかと
思うと急に俺の太ももを
埃を払うようにパンパンっと
叩いた。
「大丈夫だよ、安心して?」
と言ってるかのように
ニッコリ笑うと、
崖の向こう側に走って
いって消えてしまった。
崖下に落ちた!?と思って
自転車を降りて覗いてみたけど
崖下には人が落ちた形跡は
無かった。
やっぱり人間じゃ
なかったわけだ…
不思議な事に、女の子に
太ももを叩かれてから
背中の重みも消え、
妙な声も聞こえなくなった。

結構暗くなってから
やっとこさ家に帰った俺は、
あの背中の妙なものと
峠に居た女の子の事を
ばあちゃんに話した。
ばあちゃんはその話を聞くと、
何の木かわからないけど
葉っぱのいっぱい付いた枝を
持ってきて、俺の頭から
背中、腰にかけて2〜3回払った。
一体何事かと聞くと、
お前が会ったのは
『やまけらし様』だ、
と教えてくれた。

ばあちゃんの話によると、
背中に落ちてきた物は
俺を向こうの世界に
引っ張ろうとした
かなり性質の悪いもので、
そのままだったら
確実に引っ張られてたらしい。
そして峠の途中で会った
女の子が『やまけらし様』
だそうだ。
『やまけらし様』は
山の神様の子供で、
全部で12人いるらしい。
普段は人に対して特に
何をするでもなく山を
遊びまわってるだけなのだが、
俺に憑いた物がよほど
悪かったのかそれを払って
捨ててくれたそうだ。
無邪気で純粋な
『やまけらし様』はきっと、
とんでもない物を
背負ってるお前が
可哀想に見えて取って
くだすったんじゃろ…
との事だった。

俺はなんとか
『やまけらし様』に
お礼をしようと
お供え物をあげる事にした。
昔は12足の小さなわらじを
供えたらしかったので、
俺も供えようとしたけど
わらじなんてどこにも
売ってない…。
ふと『やまけらし様』を
思い出すとなかなか現代風な
格好をしていたので、
小児用の動きやすい
スニーカーを
12足供える事にした。
とりあえず2足買って
朝の登校時、あの峠の中腹の
草むらに揃えて置いていた。
帰りに無くなってるか
確認したかったけど、
ばあちゃんの話じゃ
夕暮れの時間は
良くないものがうろつくから
危ないという事で、
次の朝の登校時に
また同じ場所を見に行くと
靴が無くなっていた。
きっと『やまけらし様』が
気に入って履いて
くれたんだろうと思う。
お小遣いの関係で
1週間に2足ずつしか
供えれないけど、
来週には全部供えれる。
走りやすいスニーカーを
履いて山の中を
遊びまわってる
『やまけらし様』を
想像すると
自然とニヤけてしまう。

いつかまた目の前に
現れてくれないかな…と
淡い期待を抱く
俺の登校ルートは、
自然と山越えに
なってしまった
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