2014年3月16日日曜日

感動する話

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町の仲間

俺んトコは田舎で私立小学校に通ってる奴は珍しかった。
と言うか皆無に近かった。
Hを見掛けるようになったのは俺が五年生の頃だった。
バス停から歩いてる姿はよく見掛けたんだが、誰も声を掛けなかった。

ある日誰かが
「あいつ誰?」
って言ったが、誰も知らない。
「聞けばいい!」

俺は
「お〜い!お前、○○小学校行ってんの?家どこだよ?××町だろ?」

Hは少し戸惑いながら話しだした。
四年生で親父の転勤で二学期から××町に住んでる。

「なぁ、帰って何してんだよ?遊ぼうゼ!」
田舎の子供は学年関係なしだ。
Hは町の仲間になった。

帰りに俺達の姿を見ると自分から声をかけてきた。
「○ちゃん!野球やろう!」
とか

俺は六年生になって
「学校は違っても××町の子供だから!」
と言ってHを子供会に勧誘した。
Hの親父さんが俺の家まで礼を言いに来た。

祭りやキャンプ、Hはすっかり俺達の仲間だった。
夏休みの地区対抗のソフトボール大会はHの活躍で優勝した。

二学期が終わり子供会のクリスマスパーティーや餅つき大会にもHは普通にやってきた。
が、Hは元々××町に血縁が居る訳でもなく、親父さんは転勤族だ。

俺達六年生は卒業式を終えて少し早い春休み。
Hと親父さんが俺の家に別れの挨拶にやってきた。
Hには母親はいなかった。
親父さんの転勤には必ずついて行かなければならない。

Hの親父さんは涙を流して
「ありがとう。」
と俺に言った。
転校は三回目。
私立の小学校ばかりで地元の子供と友達になれたのは初めて。
Hも泣いていた。

「○ちゃん、ありがとう。○ちゃんが俺のコト呼んでくれた日、一生忘れないよ」
「おい、ちょっとまて!俺達は子供だぜ?友達だぜ?お礼なんて言うなよ!」

俺は子供会のお別れ会にHを呼んだ。
本来は中学生になる俺達のお別れ会だ。
田舎だから転校していく奴なんか、ほとんどいない。
六年生+H君のお別れ会が終わってHは新しい街へ、俺達は中学生になった。

それから三十年近くがたった。
その間、Hのコトを思い出す回数は何回あったか?

俺は高校を出て地元の会社に就職。
普通に働いて、普通に遊んで、結婚して、至って普通の生活をしてた。
そんな平凡な日常が勤務先の倒産によって破壊された。

失業保険を貰いながら必死に職を探した。
しかし、田舎には職はない。十を越える会社に面接を受けに行ったが、アラフォーには厳しかった。

ある日、近郊の大手製造業か期間社員を募集していた。
採用人数は多いが年齢がどうか? 建前上は年齢制限はNGだが実際は若い者が有利なのは明白だ。俺はダメ元で応募したら面接の通知がきた。
今までは、例の〜お祈りします。
って結ばれる通知だった。

指定日に面接に行った俺を迎えてくれたのはHだった。
ドアを開け
「○○です。よろしくお願いいたします」
「○ちゃんだろ?俺、H!昔××町に住んでたH!覚えてない?」

さすがに当時のようにタメ口で返事は出来ない。
Hは他に二人いた面接官に
「俺の恩人なんだ。内定でいいな!○ちゃん来週から来てよ。」
「ありがとうございます。一生懸命頑張ります。よろしくお願いいたします」
「○ちゃん。辞めてよ!Hさん!とか絶対に言うなよ!
 ○ちゃんが俺にしてくれたコト忘れたコトないよ。また友達で居れるよね?」

Hの顔を潰す訳にいかない俺は一生懸命働いている。
H課長は正規登用に推薦してくれた。

Hは大学を出て、今の会社に就職したらしい。
会社を選ぶ時に ○県に事業所がある!コトが決め手だったと言っていた。

「○ちゃん?俺、××町に家建てようと思ってるんだ。今、会社の借り上げだから・・・」
俺に酒をつぎながらHは言った。

「本社採用だろ?総合職だろ?転勤は?」
酒をつぎ返し言った俺に、
「俺さぁ、故郷ってないのな?××を故郷にしたいだよ。○ちゃん達とさぁ、遊んだトコをさぁ。」
「部長には成れんだろうし、転勤あっても子供置いておきたいし帰ってきたいんだ××町に。」

Hは再び××町民になり、
仲間になった。
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