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コンビニ
平河さんは視える人だ。
彼女の近所には最近、
オシャレなイタリアンバルが
できた。
お店はビルの一階に入っており、二階から最上階までは
アパートとなっていた。
安価な上にメニューは本格的。
駅から少し歩くとはいえ
なかなかの繁盛振りだという。
しかし平河さんはそこには
まだ一度も入っていない。
以前そこは見たこともない
店名のコンビニだった。
品揃えは最悪だが
(食料品の類は壊滅的だった。豚肉が入った惣菜と豚肉が入ったオニギリしかなかった)
それでも近さゆえに平河さんは
度々利用していたそうだ。
「日用品はどこで買っても一緒だからね。食べ物は手作り感でてたから一度も買わなかったけど」
店主は陰気な雰囲気の
五十代ぐらいの男性だった。
人見知りな性分なのか、
お客と話している場面は
見たことがなかった。
「こっちとしてはさ、あれこれ話しかけられるのも面倒だから都合が良かったんだけど、背中にもやもやっとした、薄い墨汁みたいなのが見えたのね」
あぁいうのは肩こりから欝まで
色んなことの起因になるの。
そう平河さんは仰った。
「ただこっちに悪さするわけでもないから、放っておいたの。あたしに関係ないし」
閉店は唐突だった。
「出勤時に通りがかったらシャッターがおりてて。それからはずっと閉まったまま」
閉店を告知する
張り紙すらなかった。
気づけば空き物件になっていた。
可能性はいくらでもあったが、
平河さんは店主の身に
何かがあったと思ったという。
「事情があって田舎に帰ったとか、そう思えなかったの。あのね、ある種の人は不幸になる路線っていうのが引かれてるの」
二ヶ月ほど時間をおいた後、
その物件には前述した
イタリアンバルが入った。
ワイン好きの平河さんが窓から様子を伺うと、上からなにかが降ってきた。
(雨?)
見上げると二階のベランダに
コンビニ店主がいた。
身体はなかった。
電灯の傍に店主の顔だけが
垂れ下がっていた。
生前と同様に覇気のない
眼差しで、下を睨む。
そして訪れる客——自分が店を
やっている時には決して
見れなかった——笑顔を
浮かべる客に向けて、ツー、
と唾を垂らしていたという。
「それがとても嫌な匂いなの。硫黄臭っていうのかな? 卵の腐った臭い」
唾液には平河さん以外気づかず、音もたてず客の頭に
降り注ぐそうだ。
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