2015年9月5日土曜日

恐い話

【洒落怖】謎の者



夜十時頃にAの携帯が突然鳴った。

Aの近所に住む中学校からの友人(以降B)からだ。

Aはこんな夜中に何だろうと思い
電話を取ってみると、

「今から川原で花火やりに行かへん?」

Bは普段から何かとAを誘って
ちょくちょく遊んでいる仲だったため、
いつものノリでその誘いに乗って
十時半にいつもの川原で落ち合うことにした。

Aの住んでいる町は
コンビニも一軒しか無いほどの田舎だ。

落ち合う場所となっている川原も
山道を少し進んだ奥にある
地元の人間しか知らないような場所だった。

そしてしばらくするとAは川原に着いた。

すでにBは花火を開け待っていた。

Bの持ってきた花火は多くなく、
すぐに使い切ってしまった。

もうやることも無くなったが、
まだ帰る気の無さそうなBは、

「せっかく川に来たんやし、泳ぐか。」

と言ってトランクス姿になって川に飛び込んだ。

Bは初めから泳ぐつもりだったらしく
バスタオルを二枚用意してきていた。

地元の人間にとっては、
人っ気の無い川原で泳ぐときは見られる事も無いので
水着など要らず、タオル一枚あれば十分だそうだ。

Aも夜に川で泳ぐのは初めてで、
調子に乗って泳ぎ出した。

川の中は昼間と違って真っ暗で、
まるで墨の中を泳いでいるような感じだった。

そのため、Aは早々に川から上がろうとした。

その時‥‥

突然Aの足が何かに引っ張られた。

AはBの仕業だと思った。

しかしもがきながらも川原を見てみると
Bがすでに川から上がり立っているではないか。

じゃあ足を引っ張っているのは‥‥‥

一瞬背筋がゾクっとし、
月明かりのよってかろうじて見える足回りを確認した。

‥‥何もいない‥‥‥

そして引っ張られている感じは収まった。

Aはすぐさま川原に上がり、
Bにすぐにここを去ろうと告げようとした。

しかしAは自分の目を疑った。

Bの顔の後ろに鬼の形相をした顔が浮かんで見えた。

「早く逃げろ!!」

Aは突然の事に
あっけにとられているBの手を引っ張りながら
その場所を去った。

逃げる最中にBに簡単にそのことを告げた。

するとBがもうすぐ山道を抜けるというところで
突然叫び出した。

「おいっ、なんだあれ!?」

A達が走っていく方向に黒い塊が動いていた。

大きさは大体1メートル弱で、
人間とも動物とも言えないような物体があった。

そしてその物体はナメクジのように這うようにして動き、
A達の行く手を阻むような感じだった。

Bは驚き、来た道を戻っていった。

そしてAもそれに続こうと思ったが出来なかった。

Bが走っていた道を見てみると、
木の間に無数に伸びる手が手招きをしていた。

その光景は異様で、
月明かりが無く前方の黒い物体の姿は見えないのに、
無数に広がる手だけは
発光体の様にうっすら見ることが出来た。

AはすぐさまBを呼び戻そうとしたものの、
Bには手が見えていないらしく
そのまま暗闇に消えていった。

Aは迷った後に、黒い物体の方に走っていった。

眼をつぶり、時々半眼を開けながら
黒い物体にぶつからないようにその場を走り抜けた。

山のふもとまで出ることができ、
少し安心して後ろを振り返った。

すると先ほどの物体が追いかけてきているではないか。

ナメクジなんて動きでは無い、

まるで地面を滑るようにしてAに迫っていた。

山のふもとまで出たおかげで
月明かりがその物体をかすかに照らし出した。

しかしそれでも、その物体は見えない。

周りの草や木なんかはそれなりに見えるのに関わらず、
その物体だけはどうしても見えなかった。

まるで暗闇が地面を這っているように見えたと言う。

「うわあぁぁぁぁ!!!!!!」

Aは一心不乱に駆け出した。

五分ほどしたであろうか、
Aは近所の小学校まで逃げることができた。

Aは逃げるときに
とっさに掴んだ自分のバックから
Tシャツを出し身に着けた。

しかしさすがに深夜の小学校に
トランクスとTシャツ姿でいるとこを見つかったら
問答無用に捕まると思い、
Aはその後は見つからないように帰路に着いた。

途中、後ろから何か追いかけられているような気はしたものの、
あえて振り返らず小走りで十分ほどで家に着いた。

Aはそのままお風呂に入り、
逃げるように布団に入ると眠りに付いてしまった。

そして翌日、
Aは眼を覚ますと
すぐにBのことが気に係り電話を入れた。

「なんだよ、こんな朝っぱらから‥」

Bは何事も無かったのかのように話している。

Aは不思議ながらもあの後の経緯を尋ねた。

「は?何言ってんの?
昨日ずっと家にいたし。
まずお前に電話なんてかけてないし。」

予想外の返答が帰ってきた。

Aは必死に昨日の出来事を説明した。

「どうせ夢の中のことだろ?お前寝ぼけすぎ。」

Bの返答に苛立ったものの、
同時に安心感も出てきた。

そしてそのまま電話を切り、
何気なく着信履歴を確かめていた。

どうせ残って無いだろと思ったのもつかの間‥‥

あった!

確かに昨日の夜十時にBから着信がある。

Aはとっさにバックを確かめた。

昨日のままだ。

これは変だと思い、昼になるとBの家に行った。

続きはカラメから

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