2016年2月1日月曜日

恐い話4

まあもう殆ど街中みたいなものだし、流石に大丈夫だよなとそのまま行かせて、さて警察に行くかどうするかとか、
この後どうしようかとかちょっと色々期待もしながら話をしていたのだが、いつまで待っても3人とも戻ってこない。
10分くらい経っても帰ってこないので、流石におかしいと駐車場脇にある公衆トイレへと向かい声をかけたのだが返事がない。
中を確認しようにも、いくらなんでも女子トイレに入るのは問題があるし、もしかしたらすれ違いで戻っている可能性
もあるんじゃないかと車に戻ったのだが、車にも戻っている気配がない。
ちょっとこれはヤバイかもしれない…
ひとまずすれ違いになるといけないので、俺だけ車の前に残り、A,B、Cでもう一度トイレに探しに行く事にした。
待っている間、俺は何となくだが彼女たちの車を見ると、一箇所ドアが開いているのが見えた。
あれ?帰ってきた?と思い車内をみたのだが誰もいない。
「おかしいな?さっきからドア開いていたっけ?」となんとなく車内を見ると、座席のところから3人のうち誰かの物らしい
バッグが地面に落ちかかっていて、何となく奥に戻そうと手を触れたところ、バッグが地面に落ちて中身が
ぶちまけられてしまった。
しかも口紅かリップクリームか何からしきものがコロコロと転がって行ってしまっている。
「これ戻しておかないとヤバクね?」と、転がっていったものを拾い振り返ると、トイレに向かったA,B、C達が戻ってきた。
Aが言うには、流石におかしいのでトイレの中に入ってみたのだが誰おらず、きっとすれ違いになって
しまったのだと戻ってきたのだという。
ちょっと洒落にならん事になってしまったと感じた俺たちは、ドライブインでの出来事を信じてもらえるかどうか不安
ではあったが、彼女たちの事が心配なので110番通報する事にした。
警察が来るまでの間、交代であちこち探しにいったりもしたのだが、結局見付からず15分ほどで警察がやってきた。

警官がパトカーから降りてきたので、これまでの事情を話していると、警官が変なことを言ってきた。
「それで、その女の子たちの車ってどれのこと?」という。
俺が「いや、俺たちの車の横に停まってる…」と後ろを振り向いて呆然としてしまった、警察が来るまで間違い
なくそこにあった彼女たちの車がない…
そんな馬鹿なと4人であちこち探したのだが、そもそも駐車場には俺たちの車しかない。
明らかに不信そうに俺たちを見る警官、かなり気まずい状況になってしまったのだが、ふとさっきぶちまけたバッグを、
車に戻し忘れてそのまま俺たちの車の屋根に置きっぱなしだったことを思い出した、屋根の上を見るとバッグはある。
警官にこれが証拠だとバッグを見せて、とにかくどういう事なのか解らないけど探してほしいと頼んだ。
が、一応証拠品としてバッグは受け取ってくれたが、話自体は荒唐無稽すぎてまるで信じてもらえず、
俺たちは住所と連絡先を聞かれ、後日話を聞くかもしれないからとそのまま帰された。
この後、実はちょっと面倒な事になった。
俺たちが警官に渡したバッグ、手帳と携帯から身元がわかり、もう10年以上前に失踪届けの出ていた短大生の
ものだったらしく、俺たちは事件に関係があるのではと疑われ事情聴取を受けた。
が、そもそも10年前といえば俺たちはまだ子供である事、俺たち4人とも進学で都内にやってきただけで、そもそも
長野も群馬も地元ですらないうえに、当然失踪した短大生とも何の関係もないことはすぐにわかり疑いは簡単に晴れた。
ただ、バッグの入手先だけはかなり詳しく聞かれた。
警官が言うには、俺たちが通ってきた道に証言にあるようなドライブインなど無いのだという事で、現場検証もかねて
パトカーで来た道を逆に辿ったりもしたのだが、例のドライブインどころか『あまり整備されていない荒れた道』すら
結局みつからなかった。
ただ、事情聴取のときに見せられた短大生の写真は、3人組のうち1人で間違いはなかった。

バッグのこともあり、警官からはまた話を聞くかもしれないからと言われたのだが、未だそういう連絡はない。
ただ、今思うと色々と彼女たちには不審な点がある。
見た目が失踪当時のままという一番異様なことはまず置いておくにしても。
一つ目は、彼女たちは俺たちと同じルートでドライブインに到着したはずなのだが、到着した時間にそれほど
時差はないはずなのに、俺たちはあの道で一度も前方に車のヘッドライトなど見ていない、かなり見晴らしのいい
場所も通ったはずなのだが。
二つ目は俺たちが彼女たちに話しかけられた状況だ、あんな異様な状況で普通いきなり入ってきた見ず知らずの
男2人組に、不安感を感じている女の子が何の警戒もなく話しかけるだろうか?普通警戒しそうなものだが。
三つ目は逃げ出した時の状況、あの時、プレハブ小屋の中でやり過ごそうと提案したのは本当にパニックになって
いたからなのだろうか?そもそもあんな異様な状況で、3人が3人ともなんの示し合わせもせず疑問も持たず、
真っ直ぐプレハブ小屋へ向かう事などありえるのだろうか?小屋には鍵がかかっていたかもしれないし、それに
すぐ目の前に自分たちの車があるのに、だ。
最後に、あんな異常な状況にあったばかりだったにも関わらず、なぜ彼女たちは「3人だけでトイレに行く事」に
したのだろうか。
考えれば考えるほど、彼女たちの言動には不審な点が多すぎる。
もし、逃げ出す時彼女たちの言うがままプレハブ小屋に立て篭もっていたら、俺たちはどうなっていたのだろうか、
彼女たち3人の言動は今から考えると何らかの悪意があったようにしか思えない。
そもそも俺たちは彼女たちがなぜあの山道を通ったのか、その理由すら知らない。


終わり
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