2016年9月22日木曜日

アテーナとアラクネー

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アテーナはゼウスの頭から、
完全に武装した成人の姿で、
飛び出したと言われています。

実用的な技術、装飾的な技術を
司り、知恵と戦いの神でも
あります。
その力は防御するもので、
軍神アレースのような
攻撃的なものではありません。

アテーナイの最初の王・ケクロプスの時代に、アテーナはポセイドーンと争いました。
有益な贈り物をした神に
この町を捧げるという
条件でした。
ポセイドーンは馬を、
アテーナはオリーブの木を
贈りました。
神々はオリーブの木の方が
有益と判断して、
この町をアテーナに
与えたのです。
それで、この町は「アテーナイ」と呼ばれることになりました。

もう一つ、別の争いも
ありました。
それは織物が得意な人間の
乙女がアテーナに挑んだのです。
彼女の名は、アラクネー。
彼女の織物の技は素晴らしく、
できた織物だけでなく、
作業する姿も美しいものでした。
森や泉のニンフたちが、
いつも見に来ていたほどです。
アテーナが自ら
教えたのではないかと
噂されていましたが、
アラクネーはこれを否定し
弟子と言われるのを嫌いました。

「女神アテーナと勝負してみたいものだわ、負けたらどんな報いでも受けましょう」

これを聞いたアテーナは
機嫌をそこねて、
老婆に身を変え、
アラクネーに忠告しに
いきました。

「年寄りの言うことを聞きなさい。勝負は同じ人間同士でしなさい。決して、女神さまと争ってはなりませぬ。前に申されたことを女神さまに赦してもらうように。女神さまは慈悲深いお方だから赦してくださるでしょう」

アラクネーは織っていた
手をとめると、キッと老婆を
にらんで言いました
「そんな忠告なんて、他の人にして。私は一歩だって引かないし、あんな女神なんかちっとも怖くないんだから。今すぐ、勝負したいものだわ」

「女神は、今ここにいます」

アテーナは言い、
神の姿を現しました。
回りにいたニンフたちは
敬服して頭を下げました。
アラクネーは顔を赤く染め、
そして青ざめましたが、
決意を変えることは
ありませんでした。

アテーナとアラクネーの
織物対決が始まりました。

アテーナの織物は、様々な
色合いが見事なものでした。
ポセイドーンとの争いの図で、
周りにはそれを見守る
オリンポスの十二神。
ポセイドーンが大地を撃ち
馬を出現させ、アテーナ自身は
兜をかぶり、
アイギスの楯を持った姿でした。
四隅には様々な戦いの図を描き、アラクネーにこの競争を
やめるよう警告したのです。

一方のアラクネーの織物も
見事でしたが、神々の失敗や
過ちを描き出しました。
レーダーが抱きしめている
白鳥(実はゼウス)、
閉じ込められたダナエーに
降り注ぐ黄金の雨
(これもゼウス)、
エウロペーを連れ去る牡牛
(これまたゼウス)、

この他にも同じようなシーンで、彼女の神々への不遜な心と
不敬の念を強く
表現していました。

アテーナは、アラクネーの
織物の技には感嘆せずには
いられませんでしたが、
こうした神々への侮辱には
憤りを感じました。
手にした梭(ひ:織機の用具)

で織物をずたずたに
裂いてしまいました。
それから、アラクネーの
額に手を当て、
彼女にその思い上がりを
悟らせましたが、アラクネーは
反省することもなく、
我慢できずに首をつって
死んでしまいました。

不憫に思ったアテーナは、
その紐に手をふれ言いました。

「生き返りなさい、罪深い女よ。このことを忘れないように、子孫代々までぶら下がりつづけなさい」
そして、アラクネーの身体に
トリカブトの液をかけました。
すると、髪は抜け、鼻もなくなり、身体は縮んで頭は小さくなり、
指は胴体にくっつくと
細長く伸び、クモの姿に
なりました。それ以来、
クモは糸を出してはぶら下がり、
糸を紡いでは巣を
作り続けているのです。
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