2014年5月12日月曜日

タロット占い

佐伯さんが先月の週末、
女友達と飲みに行った時の
ことだった。
一軒目で軽くご飯を食べ、
二軒目でワインを飲んだ。
まだ時間が早かったこともあり、もう一軒行こうと二人は
決めたという。
新宿三丁目から歩きながら
佐伯さんは行きたい
お店を提案した。
以前会社の人に
連れていってもらったバーで、
そこのバーテンダーの作る
カクテルは絶品だった。
何より好きな俳優に
顔が似ており、
佐伯さんはもう一度会いたい
と思ったのだという。
だが三ヶ月の間に店名は
変わっていた。
それでも……と
一応入店するも、
やはり見たことのない
オバサンが一人で
切り盛りをしていたという。
だいぶ歩いていたことも
あったので、
とりあえずワインを注文した。
他に数人いる客は
誰もが常連のようだった。
オバサンが二人の席まで
お酒を持ってきた時、
「初めて?」と聞かれた。
「ええ。以前ここにあったお店には来たことがあったんですけど……」
「そうなの。まぁ移り変わりが激しい街だから」
バーテンダーの行方について
何も知らなさそうだったことが
残念だったという。
店内には『タロット占い二十分三千円』と張り紙がしてあった。
佐伯さんの友人が
どんなのですか? 
と尋ねるとオバサンは
タロットカードを
奥から持ってきた。
「ここはね、お酒も飲めるけどタロット占いもできるの。
貴女達初めてだから、
サービスで一度占ってあげるわよ」
オバサンの提案に友人は
食いついたが、
佐伯さんは冷める
一方だったという。
バーテンダーに
会えなかったこともあるし、
占い関係は苦手だった。
佐伯さんは女性には珍しく
血液型占いさえも嫌いだった。
オバサンがタロットカードを
机に広げ、まず友人に
カードを引くように言った。
さらに二枚を引かせてから
おばさんは預言者ぶった、
かしこまった顔で友人に言った。
「……貴女は今迷いながら進んでいるわね。わかるの。結果なんだけど、それはうまくいかない可能性もあると出てるわね。ただゴールした時、それは大いなる財産になるって示唆もあるから」
(なぁんだ。誰にでも当てはまることじゃない)
佐伯さんは馬鹿馬鹿しいと
思ったそうだ。
(よくでこれでお金を取る気になるものね)
「それじゃあ、次は貴女。山からカードを2枚お引きなさい」
佐伯さんは適当に、
取りやすいところから
カードを引いた。
「あぁ。なるほど。じゃあ、もう一枚ひいて」
アホらしいなぁと思いながら引いた。オバサンは佐伯さんに言った。
「うん、そうね。わかった。貴女ね、もうじき死ぬわ」
「はい?」
「たぶん……、うん、物凄く苦しんで死ぬことになると思う。餓死とか、溺死とか。狂っちゃうかも知れないわねぇ。だから早いとこお世話になった人たちに挨拶した方がいいわよ」
オバサンは表情を変えなかったという。
金を払って二人は店を後にした。
「最後にオバサンが『長くてあと一ヶ月くらいだから』って軽く言ってたわ」
翌週、どうしても気になった佐伯さんが再び店に赴くと、すでに店名は変わっていたという。渋い中年男性がオーナーのカラオケパブになっていた。
「占いなんて信じてないんだけど、ここのところ眠れない」
佐伯さんはやつれた顔で呟いた。
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