2016年4月9日土曜日

恐い話中編

832:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:13:14ID:mgI6Vee80
しばらく二週間くらい大学を休んだ。その間、友人の部屋で寝泊りした。
おれと友人は同じ医学部生だ。講義と実習で、毎日大学へ通っている。

ある日、友人が言った。
「なあ、そのつんつるてん、なんでお前を追っかけたんだ?」
「知るかよ、そんなこと」
「追いかけられたからには、理由があるだろ?理由が」
おれには見当もつかなかった。あいつが追いかける理由・・・なぜ追いかけられたのか?

「逆に考えてみてさ、そいつに追われたときお前何してたよ?たとえばどんな格好してたかとか。」
思い出しても心当たりがない。ただ・・・
「そういえば、黒いダウンジャケットを着てたな。」
あいつに襲われた日は、思い返すと毎回黒いダウンを着ていた。

「うーん、お前の黒いダウンに何かあるんじゃないか?」
そう考えると、理不尽な話である。黒いダウンを着ていただけで目を付けられ、追いかけられ、とじこもったドアに,連れていた犬を投げつけられる・・・。
しかし、思いつく原因はそれくらいしかなかった。捕まったら、一体どうなっていたのだろう。

それ以来、おれは白いダウンを着るようになった。友人に説得され、大学にも通いだした。しばらく川沿いの道は止め、遠回りして大通りの街道沿いを行くことにした。
833:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:14:41ID:mgI6Vee80
それから数日がたち、大学は冬季休業に入った。冬休みである。
でもおれは、これから4日間毎日、大学へ通わなければならなかった。

医学部の実習では、週に2回解剖の実習がある。しばらく大学を休んでいた時期があったから、休んだ分の実習を終わらせなければならなかったからだ。
解剖の実習は、決して面白いものではない。3,4時間解剖室にこもってひたすら検体。
つまりご遺体のスケッチを描くのだ。
ずっと立ちっぱなしで作業をし、先生のダメ出しをくらい、やりなおす・・・その日の分を終わらせた頃には、日が暮れていた。

実習をしに大学へ通って3日目の夜だった。いつものように遠回りして帰る。明日が実習最後だ。最終日に実習テストをやることになっている。
解剖学的な名称を答えさせる問題だ。おれは明日のテストにそなえ、途中で喫茶店へよって勉強することにした。

駅前の喫茶店に入り、窓際の席へ腰をおろす。イヤホンを取り出し、勉強に集中する・・・。
そうして、一時間たった頃だろうか。
834:本当にあった怖い名無し 2007/03/29(木)14:16:16ID:mgI6Vee80
・・・ドンッ
驚いて窓を見た。あいつだ。つんつるてん。あいつが外にいる。
窓越しに穴のあいた目でぼくをじっと見つめていた。
・・・と
ドンッ・・・ズルズルズル
窓に向かって、あいつは犬を投げつけてきた。

犬はミニチュアダックスフンドだろうか、とにかく小型犬だ。あいつは投げつけた犬の手づなをたぐり寄せ、犬を手元に運んだ。
とまた・・・
ドンッ・・・ズルズルズルドンッ・・・ズルズルズルドンッ・・・ズルズルズル
また投げつける。手づなをたぐり寄せ、また投げつける。その繰り返し。

こいつは一体、何がしたいんだ!?なぜおれだけ狙ってくる?
ドンッ・・・ズルズルズルドンッ・・・ズルズルズルドンッ・・・ズルズルズル
窓は、だんだんと犬の返り血で赤くなっていった。

あいつは人間だろうか?なにがしたいんだ?
しばらくして、警備員が駆けつけてきた。あいつはもういなくなっていた・・・。
835:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:17:49ID:mgI6Vee80
家に帰り、今までのことを思い起こしてみた。なぜあいつはおれを狙うのだろう?
今日着ていた服は、白のダウンだった。黒のダウンじゃないのに、あいつは現れた。
色は関係ないのだろうか?だとすると、他に何があるというのか。あいつが現れたとき、おれがしていた共通のこと・・・共通の・・・

「あ・・・もしかして・・・解剖。」
思い当たった。あいつが現れた日、おれはいつも解剖の実習があった。
解剖室は、いつも検体のホルマリンの臭いが漂っている。3、4時間もそこにいると、体にホルマリンの臭いが染み付くのだ。
もしかして、あいつはその臭いに反応したんじゃないだろうか?
色ではなく、臭いに・・・。そう、まるで犬のように・・・。

黒を着ていたのは、解剖で汚れが目立たないから着ていただけのことだった。
次の日、おれは実習テストを終え、川沿いの道を通ってみることにした。その日はテストだけだったので、解剖室には入っていない。ホルマリンの臭いはしないはずだ。
注意しながらいつもの場所へ向かう。・・・

いた。あいつはそこに立っていた。いつものように犬を連れ、身動き一つしない。
横を通り過ぎた。振り返ってみる。あいつは同じ格好で立っていた。気付いた感じもない。
836:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:19:42ID:mgI6Vee80
「そうか・・・やっぱり臭いだったんだ。」
あいつは何者なのか、よくわからないが、これではっきりした。ホルマリンの臭いに反応していたんだ。おれはなんだか可笑しくなった。
もう実習は無い。ホルマリンの臭いもない。

よって、あいつに追われることはないんだ。明日からは晴れて冬休みだ。休みを満喫できる。気分がよかった。
途中、友人の部屋に行こうとしたが、留守のようなので帰って寝ることにした。明日は友人を誘って服でも買いにいこう・・・
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