2016年4月2日土曜日

泣ける話 �

その日の夜、俺は絵梨に
告白するつもりでいた。
万一居なくなる前に伝えたかったから。
けど来なかった。

俺は焦った。
結局次の日の朝に3階に行った。
でも看護婦に手術直前だから
会えないって言われた。

俺は看護婦さんからもらった
メモ紙に手紙を書いた。
好きだ、って内容を。
見られたら恥ずかしいから厳重に折った。
それを渡してくれるように頼んだ。

それから何日も一人で地下に居た。
宿題は終わってて何もすることがなかったけど、以前の絵梨と同じように
飲み物飲みながら座ってた。

結果は恐くて聞けなかったし、
聞いても教えてくれなかったと思う。
だからそうやって待つしかなかった。

結論から言うと手術は成功した。
手術から5日くらいして、車椅子で
地下に看護婦さんと降りてきた時は
正直泣いた。
後から聞いた話だと、絵梨が無理を言って連れてきてもらったそうだ。
そして何も言わないまま
手紙をくれただけで帰った。

その手紙探したらあったから内容書くわ。


「気持ち、受け取りました。
 初めて告白されました。
 今まで、この容姿だから浮いてたし、
 私から避けてたのもあって、
そんなこと考えたこともありませんでした

 初めて手術が恐くなりました。
 初めて死にたくないと思いました。

 けどこうやってまだしぶとく生きてます
 麻酔からさめた時は本当にうれしかった

 でも私は長く生きられない。
 明日死ぬかもしれない。

 ○○君なら賢いからそれも
 分かってると思うけれど。
 もしそれでもいいのならよろしく
 お願いします。

 あと、恥ずかしいから私がまた
 地下に行ったらいつも通りでいて。」


手紙読んだ後は嬉しくて、んでもって口調が違いすぎて可笑しかったのを覚えてる。
その頃から一つ、俺の中に考えができてきていた。

若さからくる無謀とも言うべきか、
「医者になろう。絵梨を治そう」だった。

まだ進路を決め切れてなかったし、
幸いにも理系にいた。
けどいくら進学校だからといって、
それまで真面目にしてなかった俺に
とっては医学部は雲を掴む位置にあった。

次の日から猛勉強しはじめた。
昼間も夜も。
絵梨は体調が優れなくて地下に来ることはできなかったけど、俺は退院するまで
地下で勉強し続けた。

始業式から10日ほど経って退院する時には初めて絵梨の病室に行って
見舞いに来ることを約束した。

学校の授業も真面目に聞くようになったしきちんと予習復習もしだした。
そして毎日5時間勉強するように努めた。
土曜は出来るかぎり絵梨に会いに行く。
そんな生活が続いた。

周りの友達が引くくらい、
以前の俺とは違ってた。
人は目標ができたらこんなに
頑張れるのかと思った。

でもそれまでのツケは大きい。
10月の時点でもE判定。
担任からは「3浪くらいする気か」って
言われた。
悔しかった。

でも土曜に絵梨に会うたびに
その週の疲れがリセットされる気がした。
模試とかで会えないと辛かった。
ちなみに、絵梨は12月頃に
一時自宅療養に入った。
絵梨の家と俺の家は比較的近くかったが、俺が忙しかったからあまり会えなかった。


受かった。


地方駅弁医学部(つまり、絵梨の居た病院の医学部)だったし、後から公表された最低点で引っ掛かってた。
ドラマみたいだが、
本当に奇跡だとしか思えない。

実は俺受かるまでは絵梨に進路は内緒にしてたんだけど、言ったら凄く喜んでくれた
ちなみに、この時初めてキスした。

大学生活は大変だったけど充実してた。
体調崩して入院してる絵梨のところに
講義の間に会いに行けるし、
一緒に昼ご飯も食べれたし、
車椅子で散歩にも行けたりした。

何度か絵梨が危ない時もあったが
それも乗り越えてこれた。

その頃は絵梨の背も150cmくらいで、
やっとつるぺたじゃ無くなってきた
感じだった。
けどやっぱり幼く見えるからなんか
俺が親戚のお兄ちゃんみたいに
周りからは見えてたかもしれない。

付き合い初めてから4年。
俺が3回生の終わりの頃に、
突然絵梨がこんなことを言いだした。


絵梨「ねぇ……いつまで私と一緒にいるの…?」

俺「え、どういうこと?」

絵梨「だって私いつ死ぬかも分からないし絶対○○に迷惑かけるよ」

この辺りから絵梨は泣き始めた。

俺「それは覚悟してるけど…」

絵梨「……それに………それに私…実は
ターナー症候群なの……!」


低能でも仮にも医学生だった俺は
それくらいは知っていた。
簡単に説明すると、人間の性決定は
2本の染色体で決定されていて、
男はXY、女はXXで決定される。
けどターナー症候群は女性なんだが
染色体をX一本しか持ってない。

絵梨の場合はモザイクと言われる、
ターナー症候群独特の特徴が
ほとんど無いし、
外見も普通なタイプだった。

絵梨の場合の症状としては、
低身長・二次性徴が見られない。
小さかったのはこの為だった。

そして合併症として大動脈弁狭窄症。
染色体異常の病気には
心臓病の合併症が多い。

そして、卵子が作れない。


絵梨「その…子供……も産めないし……」

俺「うん…まあ驚いたけど…でも俺は
医者になろうと思った時からずっと
絵梨と一緒にいようと思ってたから」

絵梨「……それって……」

俺「…うあ、思いがけずプロポーズに
なってしまったよーはずかしー」

絵梨「本当に……いいの?」
俺「俺はな。絵梨の気持ち次第。
まぁすぐにとは行かないな卒業しないと」

絵梨はそのまま泣いて
俺が抱き抱えて病室まで連れ戻したよ。
この辺りの会話は鮮明に
覚えてるんだよなあ。

ちなみに、セクロスは
心臓に負担かかるからしてません。
あー、うん童貞。
でももういいと思ってるよ。
絵梨と一緒にいようと思ったら
あらがえない事実だし、ただ、卵子までないのは正直ショックだったのは認める。

続く
相互募集中
  @広告@
最新号取り寄せアドレス:
00592655.bn@b.merumo.ne.jp

ん!?なんか用?
00592655k@merumo.ne.jp

この号が気に入ったら押して下さい
☆ぽちっとな
http://merumo.ne.jp/like/00592655/b5717/?guid=ON


[メルモPR]
メルモでメルマガ発行しよう!
http://merumo.ne.jp/

バックナンバー
http://bn.merumo.ne.jp/list/00592655

配信元:メルモ byGMO
http://merumo.ne.jp/

スマートフォンの方はこちらから登録端末変更をしてください。
http://cgi.merumo.ne.jp/reader/subsc_change.do

0 件のコメント:

コメントを投稿