2016年4月9日土曜日

恐い話後編

朝、チャイムの音で目がさめた。ドアを開けると、二人の男が立っていた。
837:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:21:28ID:mgI6Vee80
「警察ですが。」
「・・・何ですか?」
「あなた、この方の友人だそうですね?」
警察は友人の写真を取り出した。

聞くと、おれの友人は下の階の部屋で冷たくなっていたそうだ。死後数日たっている。
なぜか数日しかたっていないのに腐乱していた。部屋はカギがかかっていて、自殺の疑いが強いという。

「一応、確認をお願いしたいのですが。」
警察に言われ、おれは死体の確認をさせられた。友人の顔は膨れ上がって生前の面影は無い。
「彼・・・だと思います・・・たぶん。」

つんと鼻をつく臭い・・・これが死臭というものなのかと思った。
「臭いが出てもね。気付かないことの方が多いんですよ。まあ一般の方は死臭なんて嗅いだことありませんものね。」
警察が言ったとおり、おれにもわからなかった。おかしいとは思っていたが、まさか友人がこのような姿になっていたなんて。
838:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:22:54ID:mgI6Vee80
「何か変わったことはありませんでしたか?」
おれはふと、彼の部屋のドアを見た。よく見ないとわからないくらいの・・・凹みと・・・血のような跡・・・そして郵便受けには犬の毛のような・・・

ドンッ・・・ズルズルズルドンッ・・・ズルズルズル

あいつが、友人の部屋のドアに犬を投げつけている映像が浮かんだ。
投げつけ、たぐりよせ、投げつけ、たぐりよせ・・・。
ズルズルズルズルズ・・・

警察の事情聴取が終わって、おれは部屋に引きこもっていた。もう出かける気も失せていた。
ここ数日、友人を見ていなかった。あいつは、友人を殺したのだろうか。そんなこと出来るはずない。そう信じたい。でもあのドアの凹み・・・あいつは友人の部屋にやってきていた。
あいつは、同じ大学の友人を自殺にまで追い込んだんだ。次は、おれだ。
839:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:24:35ID:mgI6Vee80
・・・バリンッ
いきなり窓が割れた。何か投げ込まれた。部屋の外からだ。見ると、小型犬がぐったりしている。

「わん。」

うあああああああああいつだ。あいつがおれの部屋の外にいる。裏庭から犬を投げつけたんだ。おれは思わず部屋を飛び出した。どこでもいい、とにかくここから逃げたかった。夢中で走った。

ブロロロロロロロロ

後ろからエンジンの音がする。あいつはスクーターに乗って追いかけてきた。
あいかわらず犬を連れている。泣き声をあげず、引きづられている。犬のかわりに聞こえるのはあいつの鳴き声。

「わんっわんっわんっわんっわんっわんっわんっ」

だめだ!このままだと追いつかれる!足とスクーターじゃ時間の問題だ。

「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん」

あいつの声がしだいに近づいてくる。

「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん」

路地を抜けて、大通りが見えた。おれはとっさに右に曲がった。
841:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:26:41ID:mgI6Vee80
キキキキキーッ
ブレーキの音。そして衝突音・・・。

あいつは曲がりきれずに対向車と衝突した。あいつは宙を飛んだ後、後ろからきたトラックの下敷きになった。
・・・おれは唖然としていた。時が止まったかのようだ。

「死臭だ・・・。」
色でもない、ホルマリンでもない、あいつは死臭を追ってきていたんだ。人間が感じることのできないくらいの、死の臭い・・・。

トラックのタイヤの間から、あいつの足が覗いていた。短いズボンから見える、あいつのスネ・・・つんつるてんは動かなかった。
しばらくして、野次馬が集まってきた。

「うわあ・・・ひどい」
「救急車は?」
「なになに、どうしたの?」
人々の話し声が聞こえる。

「顔がぐしゃぐしゃだ。みんな見ないほうがいいぞ。」
誰かが言った。

とたんに、寒気が襲った。おれは偶然右に曲がったからいいものを、もしも真っ直ぐ走り抜けていたら・・・おれがあいつのようになっていた。
あいつは、死の臭いを嗅ぎ分ける・・・。
842:本当にあった怖い名無し:2007/03/29(木)14:27:45ID:mgI6Vee80
友人を自殺に追い込んだのは、あいつなのだろうか?それとも、友人の自殺を嗅ぎ分けてやってきたのか。おれにはわからなかった。
つんつるてんは死んだ。血が流れている。動かない。

「事故だ、事故。犬も死んでるよ。」
さらに野次馬が集まってくる。みな興味心身だが、かわいそうの一つも言わない。所詮他人が死んだというのは、そういうものなのだろうか。

みんな、死んだつんつるてんを覗き込んでいた。買い物中の主婦や、子連れの親子・・・おじいさん、おばあさん・・・犬の散歩中だった人も。
犬を連れた人も。散歩中の人も。犬を連れた人も・・・犬の散歩を・・・あれ?
あれ。
犬を連れてる人、なんだか多くないか?

いっせいに、ゆっくりと、こっちを向いた。

「わん。」




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