2016年4月2日土曜日

泣ける話 �

俺が6回生になっても絵梨の
心臓は頑張っていた。
でも一度大きな発作がくると
危ない状況にもあった。
俺は胸部心臓外科教室に入って学んだ。
そして無事卒業。国試も通った。

卒業式の翌日に絵梨の両親に
話をしに行った。
絵梨の親は最初反対した。
これから短いのに俺の荷物になります、
とか言われたけども粘った。
「でも俺は絵梨と一緒にいたいです。」
とかなんとか色々言った気がする。
勝った。二人で泣いた。

俺の親は片親でかーちゃんだけだったが
あっさり了承。
「○○がその人がいいと思ったのならそれが正しいんでしょ」
とか言われた。

給料はほとんど医療費に回るため、
結婚式は挙げれなかった。
けど幸せだった。
絵梨はあまり無理はできないけど、
少しの家事くらいならできた。

でもやはり入院することの方が多かったが俺は研修医として大学病院にいたから
空き時間にはいつも会えた。
研修医の時は大学より大変だったけど
頑張れた。

研修医2年目の夏からは絵梨の
体調も芳しく、初めて家で年を越せた。
病院の近くの狭いアパートだったけど、
家に帰ったら明かりが着いてるって
いいなって実感した。

けど3月、あと少しで研修医も
終わるという時に絵梨が家で倒れた。
俺はちょうど回診中だったけど、
絵梨の主治医つまり俺の上司と一緒に
救急に駆け付けた。

緊急手術が必要だった。
身内切りはできないから俺は何時間も
手術室の前で待ち続けた。

絵梨は持ちこたえた。
でももう病院からは離れられない
体になってしまっていた。
色んな文献や論文を漁ってみたが
どうしようも無かったし、最高の手術を
してもいつまで保つかは分からない。
二人で話し合った結果、最期までこの
二人の過ごした病院でいることに決めた。

「ごめんね、新婚旅行にも
行けなくなっちゃったね」
そう言われて、
「行かなくてもいいさ、
俺は県外に出たくないしね」
強がりを言ってみた。

絵梨はいつもと同じ病室に、
毎日同じパジャマでいた。

胸部心臓外科の先生方やその病棟の
看護婦さん達も俺の嫁だと知ってるから、みんながいつも俺に半分同情で
半分尊敬のことばをくれた。


11月になって状態が悪化して
絵梨はICUに入った。
それまでの経験や学術上、
こういった患者がICUから生きて
出てくることがないというのを知っていた

主治医も俺と話をする度に
俺を慰めてくれるようになっていた。

俺の無力を実感して泣いた。
絵梨を治す為に医者になったのに、
全然目標は達成できなさそうだった。

俺はできるだけ絵梨と居たくて、休職した
新米医師は物凄くやることが多すぎるから

休職してるのに病院でいる奇妙な生活だ。
絵梨はあまり喋らなかったけれど
俺がいる時は手を握ってくれてた。


そして先月、俺とICUの機械に
囲まれながら亡くなった。
詳しくは書きたくない。

覚悟はしていたけれどやはりいざとなると辛すぎて、数日間は廃人状態だった。
葬式もあまり覚えてない。

亡くなってから1週間くらい経って、
上司から絵梨の手紙を渡された。
死んだら渡してくれるよう
頼まれていたそうだ。


「今まで本当にありがとうございました。
 これを読みながら○○は
 どんな顔をしてるかな。
 やっぱり悲しい顔かな。
 直接言うのはやっぱり恥ずかしいので
 あの時のように手紙です。
 ごめんね。

 私たちが初めて出会って、過ごしてきた この病院で一生を終えれるのはある意味 幸せと言えるかもしれません。
 ○○の日々頑張ってくれている姿をもう 見られなくなると思うととても残念です
 あの時の○○の手紙で
 私は生きる嬉しさを知った気がします。
 そしてその嬉しさを○○と
 共有できて幸せでした。
 こんな私を妻にしてくれてありがとう。
 私が遺せるのはこんな手紙だけだけど、 たまには私を思い出してください。

 ○○ならいいお医者さんになれると思う 頑張って。

 最後に、私はこれからも
 ずっと○○を好きでいます。
 これは決定事項です。

 でもまた他にいい人が見つかれば、
 その人を大事にしてあげてください。

 最愛の○○へ

 絵梨」


手紙見てやっぱり泣いた。
今も泣きまくり。
もう立ち直れたと思ったんだが。

そんなわけで俺の話は終わり。
また明日も病院に行く。
絵梨の居た病棟に行くのにも慣れてきた。

俺がもっと時間に余裕ができれば
養子でもとろうかなと考えてる。
母親がいないのは将来辛いかも
しれないけど、俺は子供に
この話ができたらなと思っている。

そして絶対俺は絵梨を忘れないだろう。

ちなみに、半分の月がのぼる空は患者の
女の子が貸してくれたんだよな。
「病院の話だから」って。
俺と絵梨のことはなんも知らないのに、
なんか運命的なのを感じたよ。

半分の月がのぼる空を読んでみて、なんか込み上げてきてしまったからこんなの書いてしまった。すまない。

みんなも、自分の大切な人を
大事にしてあげてください、本当に。
いつかは別れが来るけれど、
それまでが楽しめたらいいと思う。

寝れるかと思ったけど手紙見てしまって
また泣いてきてしまった。
10年間本当に幸せだったよ。
こんなに泣いたのはあれ以来かもしれん。

やっぱり失ったものは還ってはこないけどたくさんのものを残してくれたよ。

やっと寝れそうだから寝てみる。



久々に夢を見ました。
寝る前に泣きすぎたからな。
絵梨と美術館に行ってる夢でした。
実際に一緒に行ったことはないけど…

あーまた泣けてきたけど、
もうそろそろ出勤だから頑張るわ。
本貸してくれた子にも「泣いたわ」って言おうと思う。

行ってきます。

終わり
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