2015年12月18日金曜日

泣ける話中編

俺「そんなフラフラじゃ娘さん落としちゃいますよ」
父「え、あ、大丈夫です・・・・え、さっきの牛丼屋の店員さん?」
俺「いや店内から気になってたので・・・失礼ですけど行く宛てあるんですか?」
父「え、いやー、この子の母親のところに・・・・」
俺「お母さんの居場所ってどこです?」
父「・・・・・(誤魔化し笑い)」
俺「あの、俺朝食まだなんですよね。で、帰り道のマックでなんか食べようかと
  思ってたので、一緒にどうですか?」
父「あのー、お誘いありがたいんですけども、今持ち合わせがないので・・・」
俺「持ち合わせがないなら娘さんの朝ごはんが買えないじゃないですか。
  行きましょうよ。娘さんの朝ごはん御馳走しますから」
父「そんな!見ず知らずの方に食事を御馳走して貰ったら」
俺「いやそんなこと言っても娘さんはお腹すくでしょう?じゃあ行きましょ!」

という会話があって、無理矢理車まで連れて行き、マックへ行った。
車の中では父親がずっと謝りっぱなしだった。
「いやいいですよ。1人でご飯たべるより3人で食べた方が美味しいし」
「すいません、ほんとすいません・・・」
の繰り返しw

マックに入って、女の子に「ホットケーキすき?」と聞くと
「・・・・すき・・・」とのこと。
なのでホットケーキの朝マックのハッピーセットと自分のマックグリドルのセット、
それに父親の分で自分と同じものとソーセージエッグマフィンのセットをもう一つ。
この父親、本当に謙虚というか欲が無いというか、そんだけ頼んでも自分の分は無いと
思っていたらしい。
カウンターで「お水1ぱいもらえますか」とか言ってやんの。
いや2人分は貴方のですって言ったら「そんなのいらないですすいません、すいません」って。

とにかく合計4人前を注文して、会計して品物もらって席に着いた。
俺「俺、マックグリドル好きなんですよね。で、ナホちゃんにはハッピーセット。
  あとの残りはお父さんのです」
父「え、なんで?そんな、悪いです。私このハッシュポテトあれば・・・」
俺「そんなちょっとじゃナホちゃん抱っこできませんよ。ハイ食べて!」
その後父親に泣かれた。こんな厚意に出会ったことないって言って。
なんかね、父親も不憫だけど、ナホちゃん(偽名)がもっと不憫でならなかったんだ。

その後、食べながらなんでこんな状況になってるかを聞いた。
どうやら3ヶ月くらい前までは夫婦とナホちゃん以外にもう一人妹がいたそうだ。
ナホちゃんは父親にそっくりで(事実そっくりだった)、妹は母親似。
奥さんは妹の方を溺愛していてナホちゃんにはかなり冷たく当たっていたとのこと。
そして3ヶ月前、奥さんは妹(次女)だけ連れて出て行った。
父親の勤務先は折からの経営悪化で希望退職を募っており、父親はそれに応じた。
というか応じざるを得ない状況に追い込まれて退職した。
わずかな退職金と家計を握っていた奥さんは全てを持って蒸発した。
手元に残されたお金は数万円。そこで父親は痛恨のミスをしていた。
退職の月にすぐ振り込まれるはずの失業手当の振込先を
家計で使っていた(奥さんが握っていた)父親名義の口座にしてしまった。
もちろん振り込まれたお金は下ろせるはずもなく、奥さんが速攻下ろしてしまった。
もちろん家賃も払えずにアパートは追い出されたと。

そこまで聞いて、この父親にも色々問題あるなあと思った。
娘を一人守らないといけないのに詰めが甘すぎる。
でもそんなこと言ってられない。父親はともかくナホちゃんには三食ご飯を食べさせて
着る物もなんとかしなければいけない。事実、もう何日も風呂入ってなさそうだ。
車に乗せたときに思った。ふたりとも、臭い。


とりあえず空腹を満たしたので、我が家に連れて帰った。
父親は相変わらず「いやそんなご厚意は!」とか言ってたけど問答無用。
「とにかくナホちゃんをお風呂に入れてあげましょうよ」と。

我が家はごくフツーの1DKアパート。8畳の洋間と狭いDK、それに風呂とトイレ。
ついてすぐにナホちゃんに「ナホちゃん、しばらくここがナホちゃんのおうちね」
ナホちゃんはあんまりよくわかってないようだったけど、
「ここ、ナホちゃんのおうちー?」とかいいながらローテーブルのところに
ちょこんと座って部屋中を見回していた。
偶然冷蔵庫にカルピスがあったのでそれを飲ませながら、とりあえず父親と話をした。

父「もうほんとにすいません!こんなご恩をいただいて・・・」
俺「何言ってんですか!とにかくナホちゃんが不憫なんですよ
  お父さん、とりあえずナホちゃんとお風呂入ってきてください」

お風呂からはナホちゃんの楽しそうなキャッキャした声が聞こえてきた。
俺ももう33才なんだが、もし結婚してたらこれくらいの子がいてもおかしくないんだよね。
なんかちょっと家庭的な雰囲気を味わえた。
ここで俺は一つ決断をしていた。
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