2013年12月25日水曜日

恐い話

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飛び降りては消え、飛び降りては消え

大学時代の経験を一つ
神奈川の、敷地だけは広い某大学でのこと。

講義を受けてる時に、遠方の校舎の屋上から飛び降りる男を見た。
俺は窓からその光景を見ていたんで、驚いて立ち上がったんだけど、
声を上げようとしておかしなことに気づいた。
男が落ちた場所に死体が無い。
おかしいな、と思ってもう一度屋上を見ると、また同じ男が屋上からダイブしていた。
そして地面に墜落する寸前に消えた。んで、また屋上から飛び降りる。
あとはもうエンドレスだった。
飛び降りては消え、飛び降りては消え、
動画をループ再生してるみたいに延々それの繰り返し。
俺は、よく死者は死んだ時の状況を繰り返す、って話を思い出して、
その男がこの世のものじゃないんだってわかった。

毎日毎日、朝も昼も夕方も、延々その自殺風景はループしていた。
さすがに何度も見てると慣れてしまうもので、俺はだんだん気にしなくなっていった。
もはやその自殺風景が、日常になってしまったんだ。
でも、ある日俺が食堂に向かうために友人と外を歩いてると、
ふと真上から震えたような声がした。

「誰か止めて」

びっくりして上を見上げると、頭上数メートルくらいのところに、
飛び降りてきた男の顔があったんだ。
一瞬で思い出したよ。俺が立ってる場所が、男が墜落した場所だってこと。
気づいた時には遅かった。左肩に凄まじい衝撃を感じて、俺は気を失った。

起きた時には病院のベットで寝てた。幸い肩の脱臼と肘を骨折した程度で済んだ。
友人に聞いたところ、何もないのにいきなり俺が肩を沈ませて倒れたらしい。
頭から垂直に落ちてくる男の引き攣った半笑いみたいな顔と、
肩に感じた髪の毛が擦れるような感触と衝撃を今も覚えてる。

去年、サークルの飲み会で久々に大学に行ったんだけど、
男はまだ飛び降りを繰り返してたよ。
それ以来、自殺だけはしねぇと誓った。

かくれんぼする夢

これ4つ下の弟の話なんだ。

当時、弟は小4、俺は中2、兄貴は高1だった。
兄貴は寮に入ってたから家に帰ってくることはほとんどなかった。
俺は陸上部に入ってて毎朝ランニングしてた。
ある夏の日、いつもどおり早起きすると下のベッドで寝てるはずの弟がいなかった。
トイレに行ってるんだろうと思い、気にせず外に出た。すると弟が外で寝てた。
俺は弟を起こして気にせずランニングに行った。
今思うと玄関はカギがかかってた。
それから度々弟がいなくなり、その都度家の中で見つかった。
外はなかったが、机の下、テーブルの下、タンスの陰など隠れるように。

そんなことも忘れてた今年の正月、家族で思い出話してる時に母親が言ったんだ。
お前達兄弟は夢遊病の癖があったんだよと。
自分が夢遊病だったなんて覚えてないし、兄貴が夢遊病だったなんて知らなかった。
でも、それで思い出したことがあるんだ。で、兄貴だけに聞いてみた。

俺「昔、何度も同じ夢見たこと無い?かくれんぼする夢」

兄「そういえば小学生のころ何回か見たな」

俺「一緒にかくれんぼしてた子に誘われたことない?」

兄「一緒に川原に行こうって?行かなかったけど」

俺「同じだ。俺も断った。最後にその子に言われなかった?」

俺、兄「じゃいいや。弟と行くから」

その夢を見なくなったのはそのころからだと思う。
そう、来月は弟の十三回忌。
十二月の朝、俺がランニングから帰ると、家に救急車が来てた。
布団の中で冷たくなってるのを母親が発見したらしい。
弟が同じ夢を見たかは知らない。
川原に着いて行ったのか、末っ子だからか。ただの心不全なのか。
これは親には絶対話さない俺と兄貴だけの秘密。
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